戸建て住宅のリフォーム前、中古住宅を購入する前、どの部分をどうすれば本当に良いのか悩ましいところだと思います。

そこで今回は、住宅建築からリフォーム、リノベーションまで一手にお請けしているキトダ工務が、どのように手を入れる部分を見ていけば良いのかお伝えします。

住宅診断を依頼する

そろそろリフォームしないと…。購入したい中古住宅物件があるけれど、どれくらい手を入れればいいのか…。

何かしないといけない気はするけれど、具体的に「どこを、どのように」すれば良いのかわからない場合は「住宅診断」から始めることをおすすめします。

住宅診断のメリット

1. 購入前に住宅の欠陥・劣化状況を把握できる

パッと見ただけではわからない

  • 傾き
  • 雨漏り跡
  • 構造部の腐食

こうした隠れている部分のトラブルも発見しやすく、リスクを事前に回避できます。

2. 修繕費用の見通しを立てられる

リフォームする場合でも、中古住宅を購入する場合でも、事前に

  • 短期的に必要な補修(補修しないと暮らしにくい箇所)
  • 数年後でも大丈夫な補修

大きく2つに分けて考えることができるので、資金計画が立てやすくなります。

3. 価格交渉の材料になる

中古住宅購入前の場合なら、大きな劣化や補修が必要な箇所がわかると、その分を根拠として値引き交渉しやすくなります。

4. リフォーム後や中古住宅購入後のトラブルや後悔を減らせる

50代を過ぎてからの大規模リフォームや、中古住宅購入を「住み替え」として考えるなら、手を入れる最後の機会になりやすいです。

住宅診断をしておくことで、「必要なこと」「必要ではないこと」がハッキリしますので、安心感が増します。

ということは、リフォームした後で「もっとこうしておけば…」とか、中古住宅を購入した後で「失敗だったかも…」という後悔を減らすことにつながります。

5. 住宅リフォームの計画が立てやすい

住宅は「見える部分」「見えづらい部分」「見えない部分」があります。特に「見えづらい部分」「見えない部分」である、

  • 構造部分
  • 設備部分

この2つの現状が住宅診断で見えてくると、優先的にリフォームした方が良い部分かどうかを判断できます。この判断は、結果的に無駄なリフォームを避けることになります。

住宅診断を依頼するときの注意ポイント

住宅診断を依頼するときのポイントをお話します。

1. 資格または経験のある住宅のプロを選ぶ

建築士(1級・2級)で、かつ住宅の診断経験が豊富な人が望ましいです。建築士さんに知り合いがいない場合は、気になっている工務店さんに相談すれば紹介してもらえます。

2. 診断範囲とできない作業を事前に確認する

診断の基本は「目視」中心です。

ただし、最近では屋根や外壁など高所は「ドローン」を活用する事例もあります(ご近所さんの許可なども必要になりますが)。床下や屋根裏などは、人が入るのかカメラを入れるのか、などなど複数の方法があります。

診断の基本は「目視」ですが、細かな部分や、人の目で直接確認できない部分を診断する場合は「オプション費用」が発生するケースもあります。事前にオプション費用が必要なのかどうか確認しておきましょう。

3. 立ち会いの可否を確認

戸建て住宅をお持ちの場合、立ち合いの可否は必要ありませんが、借家になっている場合は気を付けてください。

中古住宅を購入する前の場合、売主の許可がないと診断ができない(簡単なのはOKでも、細かい診断はダメとかあります)場合もあります。

空き家購入を考えておらえる場合、売主との事前調整は必須です。

4. 診断の目的を明確にしておく

住宅診断の目的をはっきりさせてから依頼しましょう。

  • リフォームのために使いたい
  • リフォームの見積が納得いかないので価格交渉の材料で使いたい
  • 中古住宅を購入後のリフォーム計画に使いたい

目的によって診断で重視する内容が変わってきます。

5. 診断結果をどう活用するか事前に考えておく

住宅診断を依頼する場合、診断結果の活用基準を事前にある程度は考えておきましょう。

例えば、

  • 補修箇所が〇〇以上ある場合は、〇〇回に分けて修繕する
  • 補修箇所が○○以上ある中古住宅なら購入しない

ある程度、自分の中で判断基準を持っていないと、住宅診断をしても悩むだけになります。

住宅診断で特に見るべきポイント一覧

住宅診断を検討するときですが、特に見るべきポイントがありますのでお伝えします。

1. 構造(基礎・土台・柱・梁)

将来の大規模補修につながるため、最優先のチェックポイントがあります。

  • 基礎のひび割れ(幅・深さ・方向)
  • 不同沈下の兆候(床の傾き、建具の建てつけ不良)
  • 土台の腐朽・シロアリ被害
  • 梁・柱の割れや不自然な補強跡
  • 床下の湿気・カビ

2. 屋根・外壁・雨漏り

雨漏りは補修費が高額になりやすい部分。早期発見が重要です。

  • 屋根材の割れ・ズレ・錆(瓦、スレート、金属屋根など)
  • 外壁のひび・シーリング材の劣化
  • 雨樋の破損
  • 雨樋のつまり
  • 室内の雨染み(天井・壁)
  • ベランダやバルコニーの防水性能の劣化

3. 給排水設備(給湯器・配管・水まわり)

老朽化した配管は見落としやすい部分。リフォーム時の大きな出費につながるので、きちんと見ておきたいです。

  • 水漏れ・湿気・カビの有無(キッチン・浴室・洗面・トイレ)
  • 給湯器の年式と動作確認(寿命は10〜15年が目安)
  • 配管材質の確認(古い家は鉄管が残っている場合あり)
  • 床下での漏水跡や腐食(普段は目につかない場所なのでチェック)

4. 電気設備・換気・空調

暮らしの中で安全性と快適性が関係する部分です。

  • 分電盤の容量(アンペア)、老朽化
  • コンセントの数と配置(増設可能か)
  • 換気扇の動作確認(浴室・キッチン)
  • エアコン専用回路の有無

5. 窓・建具・断熱性能

光熱費や夏冬の快適性に大きく影響します。小さな修繕で済むことも多いので、早期発見で対処できる部分を判断しましょう。

  • 窓やサッシの動作、気密性
  • ガラスの種類(単層・複層)
  • 建具(ドア・襖)の建てつけ不良
  • 壁断熱材の有無・劣化(点検口などから確認)

6. 室内全体(床・壁・天井)

表面の状態から、ある程度は内部劣化の手がかりになるので、見ておいて損はありません。

  • 床の沈み
  • 床のきしみ
  • 壁紙の浮きやカビ
  • 天井の雨染み
  • 傾きの有無(簡易測定器で確認)

7. 外構・周囲環境

住宅そのものを気にされる方は多いのですが、外回りとなると…。家と同時にチェックしておくと安心です。

  • 敷地の排水状況(雨の日に水が溜まりやすいかどうか)
  • 境界標が明確か(後々のトラブル防止に)
  • 擁壁のひび割れや劣化(高低差のある土地は要注意です)
  • 車庫やカーポートの安全性チェック(盲点です)

8. 法令や法規チェック(可能ならインスペクターに確認)

中古住宅を購入してリフォームを考えておられる方は、「違法建築」になっていないかチェックしておきましょう。「違法建築」になっている部分があると、ローンや保険にも影響する可能性があります。

  • 増築部分があれば適法かどうか(意外に多い違法部分です)
  • 建物の傾斜地や土砂災害/浸水想定区域か
  • 建ぺい率や容積率の超過がないか

戸建て住宅築年数別の注意点

最後に、住宅の築年数別に見た場合の注意点をお話します。

築10〜20年の住宅

外装や設備が1回目の寿命に差し掛かる時期です。構造部分に関しては、大きな劣化は少ない時期です。

注意するポイントは、

  • 屋根材(スレート)が色あせ、割れ、苔で劣化していないか
  • 外壁の塗装劣化・シーリングの割れ(雨漏りリスク)
  • 給湯器の寿命(一般寿命10~15年)
  • 浴室やキッチンの水栓金具の劣化、排水の臭い
  • 床下の湿気や断熱材の落ち

中古住宅の購入なら、大きな構造不良は少ないためメンテナンス費を見込めれば安心して購入しリフォームしやすいです。

築20〜30年の住宅

設備と外装は更新時期に入っています。構造部分の劣化も少しずつ見え始める時期です。

注意するポイントは、

  • 屋根や外壁のメンテナンス履歴の有無
  • 水まわり設備の寿命は交換前提で考える
  • 給湯器、エアコン、換気扇など設備の総入れ替えが必要な可能性もあり
  • 白蟻被害の有無(防蟻の再施工時期)
  • 配管の劣化(特に鉄管や古い銅管)

中古住宅の購入なら、「売主がどこまでメンテナンスしているか」で状態が大きく分かれます。状態をしっかり知った上で、リフォーム予算を確保すると安心です。

築30〜40年の住宅

この築年数の住宅の場合、多くが「新耐震基準(1981年〜)」に該当するのですが、初期の住宅は該当していないケースもありますので念のためチェックが必要です。 設備や外装は2回目の寿命時期に差し掛かっています。

注意するポイントは、

  • 構造(基礎・土台)の劣化が出やすい
  • 床のたわみ、沈み、建具の不具合は不同沈下の可能性があります
  • 配管の腐食、漏水リスクが高いです(交換前提)
  • 断熱が薄い(壁に断熱材が無いケースも)
  • サッシがアルミ単板ガラスで結露しやすい

中古住宅の購入なら、構造や雨漏りの有無が購入判断のポイントになります。修繕やリフォームではなく、リノベーション前提で検討される方が多いです。

築40年以上の住宅

新耐震以前の建物(1981年より前)が混在しています。設備・外装・配管などは全面的に更新が必要な時期になっています。長く住むなら耐震補強や全面改装を考えるレベルです。

注意するポイントは、

  • 旧耐震→耐震診断・補強の検討は必須
  • 基礎の劣化や無筋コンクリートの可能性があります
  • 柱、土台の腐朽、シロアリ被害の可能性も
  • 大規模な傾き(不同沈下)も考えられる
  • 電気容量が小さい、または配線が古い(現在の暮らしには向いていない)
  • 過去に何度か雨漏りを起こしている可能性あり

中古住宅の購入なら、価格は安く魅力的です。しかし、価格だけで決めてはいけません。「構造が健康かどうか」を見極めましょう。専門家に調査してもらうことをおすすめします。

築年数に関係なく見ておきたい共通ポイント

住宅の劣化には、築年数に関係なく劣化が進む部分があります。

  • 雨漏り(屋根・外壁・バルコニー)
  • 基礎ひび割れ・不同沈下
  • 床下の湿気・シロアリ跡
  • 設備の劣化(給湯器・換気)
  • 増築部分の法令チェック

ほとんどは自然環境や気候条件が理由になっていることが多いです。

中古住宅の場合なら建築された時期によっては規制や法令が甘かったため、違法なのに建てられてしまったということもあります。

さいごに

戸建て住宅のリフォームは、どの部分に手を入れるのか判断が難しいところです。

見た目に劣化している部分は、わかりやすいのでリフォームしようと決断できますが、そうでない部分は放っておくのではなく調査してから判断するのがおすすめです。