昨今、大型台風の発生や台風まではいかなくても大雨が続くことが頻繁にあります。線状降水帯が発生し、自分が住んでいる地域に居座りだすと、なかなか止みません。
お住まいの場所や雨の降り方によっては水害が発生するリスクが高まっていると言えます。今回はいざという時でも、安心できる水害対策リフォームについてお話します。
なぜ水害対策リフォームを検討する必要があるのか
気候変動による「水害リスクの増大」
- 近年の気候変動の影響で「線状降水帯」や大型台風による短時間豪雨が急増している
- 国土交通省のデータでは、1時間に50mm以上の豪雨の発生回数は40年前の約1.5倍以上
- 都市部・地方を問わず、今まで浸水しなかった地域”でも浸水被害が発生している
こうした背景からわかるのは、「これまでは大丈夫だった」という考え方が通用しなくなってきているということ。
お住まいに関する「備え」の考え方も更新していく必要が出てきています。
戸建て住宅の構造的な弱点への備え
- 戸建て住宅は、マンションに比べて地盤が低い・床下がある・排水設備が個別という特徴をもっている
- 築20年以上の家では、防水性能や排水勾配が劣化しているケースが多い
おそらく、あなたも気づかれていることだと思います。
戸建て住宅は構造的に浸水リスクを抱えやすいため、定期的なメンテナンスと補強が必要です。
また「自宅の防御力を上げる」ことは、不動産価値を守ることにもつながります。
高齢期の「避難の難しさ」
- 60代以降になると、体力的に避難が難しくなってきます
- 特に夜間の判断が遅れるといった課題があります
実際、新聞などの記事を見ていると浸水災害の犠牲者の多くが高齢者です(特に在宅中)。
こうした難しさや課題が見えていますから、60代以降の方の場合は「逃げる」よりも「守る」対策が重要になってきます。
自宅の防水・止水・安全対策をしておくことで、在宅避難(家の中で安全を確保する)が可能になります。在宅避難が可能になると、避難中のストレスもかなり減ります。
被害後の「修理費・生活再建負担」が大きい

- 床上浸水を1回でも受けると、修理費・家電交換・家具廃棄・消毒などで100~300万円以上の出費になることが多い
- 保険や公的支援だけでは全額補填できないケースが大半
水害対策リフォームは、「将来の損失を防ぐ投資」といえます。事前に数十万円?程度の対策をしておけば、万が一のときでも被害額を1/10以下に抑えられる可能性があります。
安心して「これからの暮らし」を続けるため
- 60代以降は「老後の住まいを整える時期」
- 一度リフォームすれば、今後10~20年の安心が得られます
防水・止水・設備対策を行うことで、災害時でも落ち着いて過ごせる住まいにバージョンアップできます。このバージョンアップは、精神的な安心感(「災害が来ても大丈夫」という自信)を得ることができる方法です。
検討しておきたい5つの水害対策リフォーム

使いやすく、安全性と費用対効果のバランスを考えると、次の5つの対策リフォームがおすすめです。
外構まわりの「止水対策」リフォーム
目的:雨水や浸水を建物内に入れない
- 止水板(防水板)を玄関や勝手口に設置
- 土間・車庫・玄関前の排水勾配を見直して、水が家に流れ込まないように整備
- 止水ポンプや側溝の清掃・補修も忘れずに
止水板に関しては、軽量タイプ・ワンタッチ式もありますので、女性一人でも装着可能です。
メリット
- 浸水そのものを物理的に防げる(最も即効性が高い)
- 軽量・簡易式の止水板なら女性でも設置可能
- 大規模工事が不要な場合が多く、短期間で施工可能
デメリット
- 設置・撤去を自分で行うタイプは、急な大雨の時に対応が大変
- 高い水位(床上浸水レベル)になると完全防水は難しくなる
- 排水経路(側溝・ポンプ)の定期点検が必要
費用目安
設置箇所数や素材によりますが、概ね10~50万円。
外壁・基礎・床下の防水強化
目的:建物自体の耐水性能を上げる
- 外壁や基礎のひび割れ補修+防水塗装
- 床下換気口への逆流防止のフラップの取り付け
- 床下防水シートや防水モルタルで浸水対策
メリット
- 家自体の耐久性と防水性能が向上
- シロアリやカビの発生リスクを減らせる
- 一度施工すれば効果が長持ち(10年程度)
デメリット
- 施工範囲が広いと費用が高くなりやすい
- 壁内部や床下の施工は工期が長く、居住中の負担がある
- 外から見えにくいため、効果の実感が得にくい
費用目安
建物の規模によりますが、概ね20~80万円。
屋根・雨どいの点検と改修
目的:雨水排水をスムーズにして、家への浸入を防ぐ
- 雨どいの詰まり・勾配のズレを修正
- 屋根瓦・スレートの浮きや破損を修理
- ベランダや屋上の排水口・ドレンの清掃・防水再塗装
メリット
- 雨漏りや排水不良による被害を未然に防げる
- 定期点検で建物全体の寿命を延ばせる
- 費用が比較的抑えやすく、工期も短い
デメリット
- 屋根の形状や劣化状況によっては高所作業費が増える
- 定期的なメンテナンス(5~10年ごと)が必要
- 劣化が進んでいる場合、葺き替えなどで高額になることも
費用目安
劣化状況によりますが、概ね10~50万円。
電気・給湯設備の「高所設置リフォーム」
目的:浸水時の被害軽減・復旧コスト削減
- 分電盤やコンセントを床上60cm以上に移設
- 給湯器やエアコン室外機を架台に乗せて高所設置
- 浸水時も停電・漏電リスクを軽減
メリット
- 浸水時の漏電・故障・火災リスクを軽減
- 停電後の復旧が早くなる
- 小規模工事で済み、居住中でも施工しやすい
デメリット
- 施工には電気工事士資格が必要で業者選定が重要
- 壁・床の配線変更を伴うと費用が上がる
- 見た目が変わる(コンセント位置が高くなるなど)
費用目安
設置する機器の数によりますが、概ね10~30万円。
「在宅避難」を想定した備蓄・収納・安全リフォーム
目的:避難が難しい場合でも家で安全に過ごせるように
- 2階または高所に避難スペースを確保(非常用照明・簡易トイレ・備蓄収納)
- バリアフリー動線の見直し(階段の手すりや滑り止め)
- 非常電源(ポータブル電源・太陽光発電+蓄電池)の導入
メリット
- 迅速な避難が難しい高齢者でも自宅で安全を確保できる
- 停電・断水時の生活継続力が向上
- 平常時も防災備蓄収納などが便利に使える
デメリット
- 設備導入(蓄電池や太陽光など)は初期費用が高め
- 備蓄品の入れ替え管理が必要
- 間取り変更を伴うと工事期間が長くなる場合も
費用目安
避難対策の内容によります。概ね30~100万円。
水害対策リフォームの優先順位
第1位:外構まわりの「止水対策リフォーム」
優先理由
- 浸水の入口を「物理的に防ぐ」最も直接的で効果の高い対策
- 比較的短期間・低コストで実施でき、被害軽減効果が大きい
- 雨が降る前に「自分で対応できる」備えになる
第2位:屋根・雨どいの点検と改修
優先理由
- 水害の多くは「地面からの浸水」と同時に「屋根からの雨漏り」でも発生
- 雨どいの詰まり・勾配不良で外壁や基礎に水が回りやすい
- 定期点検で建物全体の耐久性を守れる
第3位:外壁・基礎・床下の防水強化
優先理由
- 1位・2位の対策で防ぎきれない場合の「第2防御ライン」
- 長期的に家を守る“保険”のような効果
- 雨漏り・カビ・シロアリ対策にもつながる
第4位:電気・給湯設備の高所設置
優先理由
- 浸水時の二次被害(漏電・火災)防止に有効
- 浸水経験がある地域では特に重要
- 外構や防水工事と同時に実施すると効率的
第5位:「在宅避難」を想定した備蓄・安全リフォーム
優先理由
- 「命を守る」次のステップとして重要
- 物理的な浸水対策とあわせて実施することで安心感が大幅アップ
- 高齢者や単身世帯では特に有効
さいごに
水害は発生しないのが一番です。しかし、最近の雨の降り方を思い返すと「やっておいたほうがいいかも」というイメージが出てきます。
本当に「何もないのが一番」ですが、毎年のように大雨や嵐、台風が発生している日本ですから、安心して暮らせる対策は「やっておいて損はない」リフォームだと思います。
