京都や滋賀に多いシニア世代がお住いの木造住宅ですが、日本固有の気候や慣習を上手に過ごすための工夫がなされています。しかし、この工夫が年齢を重ねることで「転倒」リスクを生み出してしまう原因になりかねません。

今回は「転倒リスク」対策についてお話していきます。

シニア世代の木造住宅の特色

京都や滋賀に多い日本の昔ながらの木造住宅は、日本固有の気候を快適にするため工夫されています。例えば、湿気対策として床下の空間。

また、外へ出る時は靴を履き、家の中へ入る時は脱ぐという慣習から、玄関や勝手口やベランダへ出るところなどは「段差」があります。

屋内に目を向けると

  • 障子
  • 引き戸

大きく開いて使い勝手が良く、収納した後はスッキリ見える日本らしい美しい作りですが、戸を滑らせるための「敷居」が出来てしまうため、ここでも小さな「段差」が生まれてしまいます。

シニア世代から増える転倒「ぬかづけ」とは

シニア世代にとって「転倒」というのは、やっかいなケガになります。というのも、若いころのように、すぐに完治することが難しくなりますし、ケガによって動きづらい日々が続くと運動不足になり、カラダが「動きにくくなる」ということも起こります。

転倒リスクはどこの家にでも存在していますが、昔ながらの木造住宅は他の住宅よりも高いと言われています。その場所が「日本転倒予防学会」提唱の「ぬかづけ」です。

「ぬ」

「ぬ」は、「ぬれている」場所です。

  • 浴室
  • 雨の日の玄関
  • 雨の日の勝手口

浴室は「滑る」という意識が強いので気をつけている方も多いですが、雨の日の玄関などは本当に要注意です。

雨で滑って転倒。転倒して拍子に玄関段差でカラダのどこかをぶつける。こういうことも考えられます。

「か」

「か」は「かいだん」などの段差です。

  • 居間や寝室への入り口
  • 階段
  • 玄関

段差での転倒で注意しておきたいのは、段差の高い低いはあまり関係していないことです。段差の高さよりも「油断」しないことが大切。例えば、段差で転倒するときに多いのが「下りの最後の数段」です。

「づけ」

「づけ」は「かたづけられていない」場所を意味しています。例えば、

  • 動線上に電源コードがある
  • 床の上に物を置いている

よくある状況としては、こんなのです。

  • 机の上に置いた電気ポットのコード
  • 暖かいカーペットの電気コード
  • 扇風機のコード
  • 除湿機のコード

パソコンを使う方であれば、パソコンの電源アダプターなども同じように「かたづけられていない」と引っかかって転倒する可能性が高くなります。

「ぬかづけ」の対策方法

転倒の原因になりやすい「ぬかづけ」ですが、対策することで転倒リスクを軽減できます。

「ぬ」濡れている場所(浴室・脱衣所・台所など)の対策

1:浴室の床を滑りにくい素材へ交換

転倒防止・冷たさ軽減が期待できます。

既存ユニットバスのリフォーム時にも対応可ですので、一緒に検討してください。

2:浴室入口の段差解消・フラット化

出入り時のつまずき防止に最適です。バリアフリー仕様のドアへ変更するのもおすすめです。

浴室のドアで注意したのが浴室の内側へ開く「内開き」です。浴室内でドアの近くで転倒すると、外からドアを押して開けられないので助けることが難しくなります。

3:脱衣所・洗面所に床暖房または断熱フロア導入

冬場の温度差を減らし、ヒートショック予防に効果があります。

4:手すりや立ち上がりバーの設置

浴槽横・トイレ横に取り付けましょう。

立ち上がり・移動の安定確保ができます。吸盤式より固定式のほうが安全ですし、安定感があります。

5:自動換気乾燥機や24時間換気扇の設置

滑る原因を減らすだけではなく湿気を減らし、カビ・滑り防止にも効果があります。

浴室乾燥機付き換気扇が便利です。

「か」階段などの段差がある場所の対策

1:階段に手すりを両側または内側に設置

上り下りの安定確保になります。

途中の踊り場にも延長しておくと、さらに安心です。

2:段差を解消するスロープ・緩やかな勾配への改修

玄関・廊下・和室の敷居などの段差低減を検討しましょう。

段差をゼロにすることは難しくても、緩やかにすることや段差を小さくすることはできます。

3:階段に滑り止めテープ・発光ラインを貼る

視認性と安全性アップの方法として、もっとも手軽にできる対策です。

夜間も安心です。

4:階段下や廊下にセンサーライト設置

足元を自動で照らすことで転倒防止になります。

夜間のトイレはもちろん、夕方の少し暗くなってきたときも、足元が明るいと安心できます。

この対策もホームセンターで購入して、ご自身で設置しやすい方法なのでやってみてください。

5:段差昇降機・ホームエレベーター導入

少し先を見越したときに必要と感じられたら検討してください。 将来的な介護や車椅子利用への備えです。

「づけ」片付けられていない場所(居間・寝室・廊下など)の対策

1:造り付け収納・壁面収納の増設

床に物を置かずに整理整頓しやすくできます。キトダ工務のような「オリジナル家具」の制作も行っている工務店ですと、和室でもピッタリの収納増設が可能です。

「造作棚」の事例は こちら からご覧いただけます。

2:押入れをスライド収納や引き出し式へ改修

出し入れがしやすく、しゃがむ動作を減らすことができます。

3:通路幅を確保するための間取り変更や家具配置見直し

廊下や動線上の障害物を減らすことで、スムーズに動けるようになります。

4:吊り戸棚に昇降機能付き収納を導入

高い場所の物の出し入れを安全に行えます。

シニア世代の場合、できるだけ「高い場所」への収納は避けるようにしたいです。仕方なく高い場所への収納を考える時でも、「できるだけ高くしない」ようにしておくのがベストです。

5:照明を明るくし、足元に影ができにくい配灯に変更

散らかった物の視認性を高め、つまずき防止になります。

この対策も簡単にできます。ホント、少し明るいだけで影ができにくいので安心できます。

補助金・支援制度について

地域や国の制度によって毎年変化しますが、おおむね65歳以上の方は、何らかの制度を使えることが多いです。

過去を考えると以下の制度が利用できる場合があります。

  • 介護保険の住宅改修補助(手すり・段差解消など:上限20万円まで補助)
  • 自治体独自の高齢者住宅改修補助制度(市区町村によって内容が異なる)

地域に根差した工務店へご相談いただければ、お住まいの地域で活用できる補助金や支援制度を教えてもらえます。

先に知っておきたい場合は、お住まいの自治体窓口へお問い合わせください。

さいごに

年齢とともに筋力やバランス感覚は衰えていきます。これは誰もが経験することですし、自然の摂理ですから仕方ありません。

しかし、リフォームによって転倒リスクを減らすことは誰にでもできます。

簡単に対策できることは、ホームセンターで資材を購入されてご自身で対策。手間がかかりそうな対策は、小さな工事から造り付けの収納や壁面収納の増設も得意な「キトダ工務」のような工務店へご相談ください。

暮らしやすく、見た目もスッキリとしたリフォームをご提案させていただきます。